2026年10月15日確認
2026年10月7日、東京理科大学の硤合憲三(そあい けんそう)さんが、ノーベル化学賞の受賞者に選ばれました。硤合さんは埼玉県志木市に暮らす研究者です。受賞理由は「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒作用の発見」。難しそうな名前ですが、分子の「右と左」を考えると、研究の面白さが見えてきます。
埼玉県志木市に住む研究者が、ノーベル化学賞に!そんなニュースを聞くと、「どんな人なの?」「何を発見したの?」と気になりますよね。でも、研究の説明を読んでみると、専門用語がたくさん出てきて、なかなか理解できないこともあります。
『ひとやすみっけ』のかおかーさんです。わたしも今回のニュースが気になって調べてみました。実は、研究の入り口はとても身近な「右手と左手」の違い。今回は東京理科大学や志木市の公式発表をもとに、硤合憲三さんの経歴や受賞理由、研究のすごさを、できるだけやさしく紹介します。
硤合憲三さんとは?名前は「そあい けんそう」
硤合憲三さんは「そあい けんそう」と読みます。1950年に広島県で生まれ、東京大学の理学部で化学を学びました。その後、アメリカでの研究生活などを経て、東京理科大学で長年にわたり研究や学生の指導に携わってきた方です。
専門は「有機合成化学」。簡単にいうと、化学反応を利用して、目的の物質をつくる研究分野です。硤合さんは特に、分子の立体的な形や、化学反応でその形がどのように決まるのかを研究してきました。
2012年には紫綬褒章、2025年には日本学士院賞を受賞。2026年のノーベル化学賞受賞決定後、東京理科大学は栄誉教授の称号も授与しています。今回の受賞は、長年積み重ねられてきた研究が世界的に評価された結果なんですね。
2026年のノーベル化学賞は何がすごかったの?
2026年のノーベル化学賞は、日本の硤合憲三さんと、フランスの研究者アンリ・B・カガンさんの2人が受賞者に選ばれました。評価されたのは、分子の「右型」と「左型」を、化学反応の中でうまくつくり分けることにつながる研究です。
特に硤合さんが発見したのは、できあがった分子が次の分子をつくる反応を助ける仕組みです。しかも、ただ分子が増えるだけではなく、右型と左型のどちらか一方に偏っていくという特徴があります。
これだけでは、まだピンとこないかもしれませんね。そもそも、分子に右と左があるってどういうことなのでしょうか。ここを理解すると硤合さんの研究がぐっと身近になります。
分子の「右と左」って何?手を使うとわかりやすい
自分の右手と左手を見比べてみてください。どちらも指が5本あり、形もよく似ていますよね。でも、手のひらを同じ向きにそろえると、親指の位置が反対です。右手をそのまま左手にぴったり重ねることはできません。
実は、分子にもこれと似た関係になるものがあります。同じ原子からできていても、鏡に映したように立体的な形が逆になっているんです。このような性質を「キラリティー」といい、鏡像の関係にある分子を「鏡像異性体」と呼びます。
形は同じようでも
向きが違う
鏡に映したような
反対の形
ポイント
右手と左手のように、鏡に映した関係なのに、そのままではぴったり重ならない。分子にも、このような立体的な違いをもつものがあります。手の図はイメージであり、実際の分子構造ではありません。
ただし、すべての分子に右型と左型があるわけではありません。また、右型だから良い、左型だから悪いという意味でもありません。分子の種類や、ほかの分子との組み合わせによって、それぞれの働きが変わることがあります。
硤合反応とは?できた分子が次の分子づくりを助ける
硤合さんが発見した「不斉自己触媒反応」は、研究者の名前から「硤合反応(そあいはんのう)」とも呼ばれます。「不斉」は右型と左型が同じ割合ではないこと、「自己触媒」はできた物質自身が、次の反応を進める助けになることを意味します。
例えば、右型と左型の分子があって、最初は右型がほんの少しだけ多かったとします。特定の反応条件では、できた右型の分子が次の右型をつくる反応を助け、右型がさらに増えていきます。このように、最初は小さかった左右の偏りが、反応を通して大きくなるのが特徴です。
右型と左型の分子があります。例えば、右型が少しだけ多い状態から考えてみます。
特定の条件では、できた右型の分子自身が触媒として働き、同じ右型の分子ができる反応を助けます。
反応が進むと右型が増え、右型と左型の割合の差も大きくなります。
※反応の特徴を理解するための模式図です。実際には反応に使う材料や条件が必要です。右型・左型のどちらが増えるかは、最初の状態などによって異なります。
ここで大切なのは、何もないところから分子が勝手に増えるわけではないことです。化学反応に必要な材料があり、できた分子が触媒として働きます。分子が増えることと、片方の形への偏りが大きくなることが、硤合反応の大きな特徴です。
かおかーさん「できた分子が次の反応の助っ人になる」と考えると、少しイメージしやすいですね
一緒に受賞したカガンさんは何を発見したの?
今回のノーベル化学賞は、硤合さんとフランスのアンリ・B・カガンさんの共同受賞です。ただし、2人がまったく同じことを発見したわけではありません。カガンさんは、分子の左右の偏りに関わる「非線形効果」を研究しました。
非線形効果とは、簡単にいえば触媒に含まれる分子の左右の偏りと、反応でできる分子の偏りが、単純な比例関係にならない現象です。触媒側の小さな差から、予想以上に大きな偏りが生まれる場合があることを明らかにしました。
| 研究者 | 研究のポイント |
|---|---|
| アンリ・B・カガンさん | 触媒の左右の偏りと、できる分子の偏りが単純には比例しない「非線形効果」 |
| 硤合憲三さん | できた分子自身が触媒となり、左右の偏りを増幅する「不斉自己触媒反応」 |
どちらも、化学反応で分子の形をコントロールするための重要な発見です。研究内容は異なりますが、分子の「右と左」に関する理解を深めた成果として、2人がノーベル化学賞に選ばれました。
この研究は薬づくりにも役立つの?
分子の右型と左型の違いは、医薬品を開発するときにも重要です。体内のタンパク質などは立体的な形をもっているため、薬の分子がどのような形をしているかによって、結びつきやすさや作用が異なる場合があります。
そのため、目的に合った形の分子をつくる技術は医薬品の研究や製造で大切な役割を果たします。硤合さんたちの研究は、分子の左右の偏りがどのように生まれ、増えていくのかを理解するうえで、化学の発展に貢献しました。
ただし、今回のノーベル賞は「新しい薬が完成した」という発表ではありません。評価されたのは化学反応の仕組みに関する基礎研究です。すぐに特定の治療へ結びつくわけではありませんが、こうした発見が将来の技術を支えることもあります。
生命の起源の謎にも関係しているって本当?
実は、わたしたちの体をつくる分子にも、右型と左型の偏りがあります。例えば、タンパク質を構成するアミノ酸は、基本的に「L型」と呼ばれる向きのものが使われています。こうした片方への偏りは、生命の大きな特徴のひとつです。
では、どうして生命の世界では、一方の形が多く使われるようになったのでしょうか。この疑問は「ホモキラリティー」と呼ばれる研究テーマにつながります。硤合反応は、小さな左右の偏りが大きくなる仕組みを示したことで、この謎を考える重要な手がかりになりました。
もちろん、生命が誕生したときに実際にどのような化学反応が起きたのか、すべて解明されたわけではありません。また、アミノ酸のすべてに左右の形があるわけでもなく、グリシンは例外です。研究が示したのは、生命の謎を考えるための重要な仕組みなのです。
埼玉県志木市でもノーベル賞受賞を祝福
硤合さんは広島県生まれですが、埼玉県志木市に暮らしています。志木市は2026年10月8日、硤合さんのノーベル化学賞受賞を祝う市長コメントを公式サイトに掲載しました。市民の受賞を誇りに思う気持ちや、子どもたちへの期待が伝えられています。
遠い世界の出来事に感じられるノーベル賞ですが、同じ埼玉県で暮らす方が選ばれたと聞くと、ぐっと身近になりますよね。志木市の公式発表には、長年研究を続けてきたことへの敬意も込められています。地域で喜びが広がったことも、今回のニュースの印象的なところです。
長年続けてきた研究がノーベル賞につながった
硤合さんの研究が注目されたのは、2026年になってからではありません。不斉自己触媒反応に関する研究成果は、1995年に科学誌「Nature」に掲載されています。その後も研究が積み重ねられ、世界中の研究者に知られる「硤合反応」となりました。
東京理科大学の受賞記念ページには、硤合さんの研究や経歴、記者会見などの情報がまとめられています。ノーベル賞の発表をきっかけに知った方も、そこから何十年にもわたる研究の歩みをたどることができます。
また、文部科学省は2026年10月7日に受賞を祝福し、若い研究者への支援などを進める考えを示しました。研究の成果が世界に認められたことに加えて、これから科学を学ぶ子どもたちにとっても、励みになるニュースですね。
子どもに説明するなら、こんな話し方でもよさそう
「不斉自己触媒反応」をそのまま子どもに説明するのは、ちょっと難しいですよね。そんなときは、難しい研究名を覚えるよりも、右手と左手の違いから話してみるとイメージしやすいかもしれません。自分の両手を見比べるだけなので特別な道具も必要ありません。
子ども向けに説明するなら
「右手と左手って、似ているけれど反対の形をしているよね。実は、すごく小さな分子にも、そんな左右の違いがあるものがあるんだって。その分子の片方が、どうしてたくさん増えるのかを研究した人がノーベル賞に選ばれたんだよ」
もちろん、これだけですべてを説明できるわけではありません。でも、「分子って何?」「本当に右と左があるの?」と、次の疑問が生まれたら面白いですよね。身近な形から科学の世界へ興味を広げられるのも、こうしたニュースの魅力だと思います。
志木市から世界へ 身近なニュースを科学への入り口に
2026年のノーベル化学賞に選ばれた硤合憲三さん。その研究は、分子の右型と左型、そして小さな偏りが大きくなる仕組みに関するものでした。名前だけを見ると難しく感じますが、右手と左手の違いから考えると、少し親しみやすくなります。
埼玉県志木市で暮らす研究者の受賞は、地域にとってもうれしいニュースです。子どもと一緒に両手を見比べながら、「分子にも右と左があるんだって」と話してみる。そんな小さな会話が、科学への興味につながるかもしれませんね。
※この記事は2026年10月15日時点で確認できた東京理科大学、志木市、文部科学省などの発表をもとに作成しています。研究の説明や図は、一般の方にも伝わるように内容を簡略化したものです。





