音読はできる。テストでも正解する。でも、読み終わるまでにとても時間がかかり、家では疲れきっている。「できているように見えるけれど大丈夫かな」と迷うとき、読みの正確さと一緒に、時間や負担を見ていく視点が役立ちます。
『ひとやすみっけ』のかおかーさんです。2025年には、海外でディスレクシアの定義を見直す研究が発表されました。2026年10月19日時点の資料をもとに、研究者Julia Carroll教授らが考えたことと、家庭での相談につながる点を紹介します。
定義を見直したJulia Carroll教授らの研究
バーミンガム大学のJulia Carroll教授らは、研究者、専門教員、心理職、当事者などの意見を集め、ディスレクシアについて合意できる点を整理しました。第1回の調査には58人が回答し、段階的に意見を検討する方法が用いられています。
2025年2月公表の研究では、読みの流暢さやつづりの困難、複数の要因、ほかの発達上の困難との重なりなどを含む定義が提案されました。流暢さとは、文字を正しく読むだけでなく、滑らかに読むことにも関わる言葉です。
詳しい方法は研究論文で確認できます。子どもに新しい治療を行った実験ではなく、専門家や当事者の見解を整理した研究です。日本の診断基準が、この論文で自動的に変更されたわけではありません。
正しく読めることと楽に読めることは同じではない
家庭で考える例として、短い文章なら正しく読めても、長い文章では時間がかかり、内容を考える余裕がなくなる場面があります。これだけで診断はできませんが、「最後まで読めた」という結果に加えて、過程も相談の材料にできます。
わたしが気になるのは、周囲に合わせるための努力が、見える結果の裏側に隠れてしまうことです。答えが合っていても、何度も読み直したのか、前もって覚えたのか、誰かの読み上げを使ったのかで、取り組み方は違います。
| 見える結果 | 一緒に知りたい過程 |
|---|---|
| 音読できた | 読み終えるまでにどれくらい負担があったか |
| 問題に正解した | 問題文を読むときに何が助けになったか |
| ノートが完成した | 授業中に説明を聞く余裕もあったか |
| 宿題を提出できた | 家庭でどの程度の手助けを受けたか |
これは家庭用の診断チェックリストではありません。本人を測るために毎日時間を計ったり、支援を外して試したりする必要もありません。普段の様子から、本人が大変だと言っている場面を一つ共有するところから始められます。
一つの原因ですべてを説明しようとしない
今回の定義案では、困難に複数の要因が関わることや、ほかの発達上の困難との重なりにも目を向けています。「ディスレクシアなら全員同じ読み方をする」という捉え方では、その子が必要としている支援を十分に考えられません。
例えば、文章を読む部分と、指示を覚えて作業する部分の両方で困っているなら、それぞれを具体的に相談できます。家庭で原因を決めるより、どんな課題のどの段階で大変なのかを、先生や専門家と整理していく方が役立ちます。
名前を知ることで説明しやすくなることもありますが、名前だけで支援が完成するわけではありません。国立特別支援教育総合研究所も、合理的配慮は一人ひとりの状態や教育的ニーズに応じて決めるとしています。
海外の定義案を日本語の学習へどうつなげるか
英語の読み書きで使う「つづり」という言葉を、そのまま漢字の書き取りに置き換えて考えることには注意が必要です。学ぶ言語や文字の仕組みが異なるため、海外の説明だけで日本語の困難を判断することはできません。
家庭や学校で共有するなら、仮名の音読、漢字を含む文章、書き写し、自分で文章を書く課題など、実際の場面を分けて伝える方法があります。「国語が苦手」という一言より、何を学んでいるときに困るかが見えやすくなります。
| 課題の例 | 相談で伝えられること |
|---|---|
| 文章を音読する | 読み直しが多く途中で疲れる |
| 漢字を書く | 口では言えるが書くときに止まる |
| 書き写す | 見本とノートを何度も見比べている |
| 作文を書く | 話せる内容を文字にするまで時間がかかる |
表の例に当てはまっても、ディスレクシアだと決まるわけではありません。学習歴やほかの要因も含めて評価する必要があります。本人の苦手を並べるためではなく、どこに支援を入れると学びに参加しやすいかを話す材料です。
家庭の手助けも学校へ伝えてよい
保護者が問題文を読んだり、書く内容を一緒に整理したりして、宿題を終えている家庭もあるでしょう。完成したプリントだけを学校へ出すと、どんな支援があったかまでは伝わりません。その経過も、面談で話してよい情報です。
例えば「問題文を読むところは保護者が手伝い、答えは本人が考えた」と分けて伝える方法があります。手助けを隠さず共有することは、子どもの成果を小さく扱うことではなく、力を発揮できた条件を伝えることになります。
学校で使える支援を探すときにも、その条件が役立ちます。毎日の宿題を家庭の工夫だけで乗り切るのではなく、先生と相談し、必要に応じて通級の担当者や特別支援教育コーディネーターなどにもつないでもらえます。
読む練習と内容を学ぶ時間を両方確保する
読みの力を育てる指導と、音声などを使って教科の内容に触れることは、どちらも検討できます。何を学ぶ時間かを明確にすると、「全部自力で読むべきか」という迷いから、具体的な学習目標の相談へ進めます。
例えば生き物の特徴を調べる課題なら、文章を聞いて写真と見比べる方法も候補です。文字と音の関係を学ぶ時間には、そのつまずきに応じた指導を考えます。以下は使い分けを話し合うための例で、決まった指導手順ではありません。
| 学習の目的 | 相談する支援の例 |
|---|---|
| 文字の読み方を学ぶ | つまずいている読み方を個別に教えてもらう |
| 文章の内容を理解する | 音声や図を併用して内容を考える |
| 自分の考えを伝える | 口頭で整理してから文章にする |
| 学んだ内容を確かめる | 評価したい力に合う回答方法を相談する |
実際の対応は、教材や本人の状態、授業や評価の目的によって変わります。道具を使うかどうかだけを先に決めず、本人が何を理解し、どこで止まっているのかを確認しながら、学校と一緒に方法を選んでいきたいですね。
相談前に記録するなら短いメモで十分
専門家に相談するとなると、記録を完璧にそろえなければと思うかもしれません。でも、困っている場面を一つ示せるだけでも話の入口になります。持っていく資料や評価の手続きは相談先に聞き、家庭だけで準備を抱え込まないでください。
| メモの項目 | 例 |
|---|---|
| いつどんな課題で | 説明文の宿題をするとき |
| 何が大変そうか | 読み返すうちに疲れて内容の質問まで進めない |
| 本人はどう感じているか | 読んでもらうと考えやすいと話している |
| 聞きたいこと | 学校でも同じ困り方があるか |
子どもに見せず、大人だけで困りごとをまとめるより、本人に確認できる部分は聞いてみてもよさそうです。うまく言葉にできないところは空欄のままで構いません。記録が子どもを評価する新たな課題にならないようにします。
かおかーさん提出できたかだけでなく、そこまでの大変さも知っておきたいですね
できているように見える子にも相談の入口を
今回の研究は、家庭で診断するための新しい物差しではありません。わたしには、同じ「読める」という言葉の中にも、さまざまな負担があることを考える入口になりました。正解しているからといって、本人のつらさを後回しにしたくないですね。
気になるときには、成績が大きく下がるまで待つことを相談の条件にせず、日々の困りごとを先生へ伝えられます。一度で説明がまとまらなくても大丈夫。学校での様子も聞きながら、支援が必要な場面を一緒に整理していけます。
「できるなら平気だね」と終える前に、「どんなやり方なら少し楽かな」と考えてみる。新しい定義を知った先に、そんな会話が増えたらうれしいです。見えにくかった頑張りにも気づき、その子に合う学び方につなげていけますように。





