読み書きが苦手だと、この先の進学や学びはどうなるのだろう。子どもの宿題を前に、遠い将来まで心配になることがありますよね。そんなときに知ってほしいのがディスレクシアのある成人当事者、井上智さんの大学への挑戦です。
『ひとやすみっけ』のかおかーさんです。この記事では、2026年10月19日時点で確認した書誌情報と関係者の公開紹介をもとに、井上さんの歩みを紹介します。2018年刊行の本に関する話題で、新刊紹介や本全体の読後レビューではありません。
50代で大学に挑戦した井上智さん
井上智さんは、成人ディスレクシアの当事者です。著書『夢見た自分を取り戻す―成人ディスレクシア、50代での大学挑戦』では、50代で大学に挑戦した経験が扱われています。著者名の読みは、いのうえさとるさんです。
井上賞子さんによる書籍紹介では、その挑戦が、特性を知った後にも続いた葛藤の転機として語られています。自分に合う方法と、それを認める大学や仲間の存在が支えになったことも紹介されています。
わたしがここから考えたいのは、子ども時代の読み書きの成績だけで、その人の学びを決めつけないことです。進む時期や方法が周りと違っても、学びたい気持ちを受け止めてもらえる機会は、大切にされてよいと思います。
読めるようになってからでないと学べないのか
読み書きの練習は大切にしたい。でも、十分にできるようになるまで、知りたいことに触れるのを待たなければならないのでしょうか。井上さんの歩みを知ると、読み書きの力を育てることと、内容を学ぶ機会の両方を考えたくなります。
例えば、文章を聞いて歴史を知る、実物を見て仕組みを理解する、話しながら考えを整理する。ここに挙げたものは井上さんの具体的な大学生活を再現した例ではなく、子どもの学び方を考えるための記事としての提案です。
国立特別支援教育総合研究所のLDのある子どもへの合理的配慮でも、別の方法で補うことや音声の併用などが示されています。どの方法が必要かは、本人の状態と学習の目的に合わせて考えます。
努力に加えて学べる環境にも目を向けたい
人物の挑戦を紹介すると、本人の強さや努力だけに話が集まりがちです。でも、学習方法を相談できる人や、必要な配慮を受けられる環境も一緒に見たいところ。頑張れた理由を本人の気持ちだけで説明したくないと思います。
井上賞子さんの紹介にも、方法を認めてくれる周囲の存在が出てきます。そこからわたしが考えたのは、支援があったことを、本人の成果から差し引く必要はないということです。助けを使いながら取り組んだ学びも、その人自身のものです。
| 注目したいこと | 子どもの学びで考える例 |
|---|---|
| 本人の関心 | 何を知りたいと思っているか |
| 学ぶ方法 | 読む以外に内容へ触れる方法があるか |
| 相談できる相手 | 困ったときに方法を一緒に考える人がいるか |
| 評価の方法 | 学んだ内容を伝えられる方法があるか |
表は井上さんへの取材内容ではなく、保護者が学校と話すための整理です。本人の意欲がないと結論を出す前に、今の方法では参加しにくい部分がないかを見直す。そうした視点も、この人物紹介から持ち帰ってもらえたらと思います。
成功した人との比較を子どもの負担にしない
「この人も頑張ったのだから、あなたも」と伝えたくなるかもしれません。でも、困難の程度や生活環境、興味、使える支援は一人ひとり違います。井上さんの歩みを、ほかの子どもが同じ結果を出すための基準にはできません。
子どもに紹介するなら、「いろいろな学び方を探してきた人がいるんだね」と話すくらいでもよさそうです。本人が疲れている日に、励ます材料として無理に読ませる必要はありません。保護者が知って、将来の見方を少し広げるだけでも意味があります。
かおかーさん誰かと同じ道を歩かなくても、その子の学びは続いていくと思いたいです
大学への進学も、すべての人にとっての目標ではありません。仕事、趣味、地域での活動、暮らしに必要なことを知る時間など、学ぶ場面はさまざまです。本人が選びたいことを、周りが一緒に考えられるといいですね。
好きなことへ触れる時間も残しておく
苦手な読み書きの練習で毎日が埋まると、興味のあることに触れる時間が少なくなってしまうかもしれません。まずは本人が何を面白がっているかを聞き、その内容へ近づく方法を一緒に探すことを提案したいです。
例えば、料理に興味があれば工程の写真を見る、生き物が好きなら図鑑の写真と説明を一緒に眺める。以下の例も、特定の効果を保証する学習プログラムではありません。好きなことを続けるための、小さな相談の入口です。
| 興味の例 | 触れ方の例 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 料理 | 写真付きの工程を見て一緒に作る | 読む練習を毎回追加しない |
| 生き物 | 写真や実物と説明を結びつける | 名前の暗記だけを目標にしない |
| 工作 | 作り方を実演や動画で確かめる | 完成までの速さで比べない |
| 物語 | 読み聞かせなどで内容を楽しむ | 感想を必ず書かせる課題にしない |
好きなことまで支援の成果を測る場所にしなくて大丈夫です。上手になったかより、楽しめたか、また触れたいと思ったかを聞く時間も残したいですね。学ぶことに何を求めるかは、本人と話しながら決めていけます。
進路を考えるときは支援の受け方も聞く
進学先を選ぶ時期になったら、学校名や授業内容と一緒に、学習上の配慮をどこへ相談できるかも調べられます。困難を説明した後、誰とどのように話し合うのかが分かると、入学後の生活を具体的に想像しやすくなります。
入試での配慮と、入学後の授業での配慮は、別の手続きになることがあります。使いたい方法がある場合は、出願前から実施者へ相談し、必要な書類や期限を確認します。特定の診断があれば希望する配慮がすべて認められる、とは限りません。
| 確認する場面 | 聞いておきたいこと |
|---|---|
| 出願前 | 入試での配慮を相談する窓口と期限 |
| 入学後 | 教材や課題の方法を相談する担当者 |
| 困ったとき | 授業担当者との調整を誰が支えるか |
| 継続するために | 支援の内容をいつ見直せるか |
こうした確認は、本人がすべて一人で行う必要はありません。年齢や希望に応じて、保護者や支援者も一緒に整理できます。進路を考えることが、本人の困難を何度も証明する作業だけにならないよう、頼れる相手を探しておきたいですね。
本の情報と図書館での探し方
『夢見た自分を取り戻す』は、エンパワメント研究所から2018年11月に刊行された本です。国立国会図書館サーチでは、著者が井上智さん、監修が佐藤里美さんとして登録されています。新しい研究報告と混同せず、当事者の経験を知る本として紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 夢見た自分を取り戻す―成人ディスレクシア、50代での大学挑戦 |
| 著者 | 井上智 |
| 監修 | 佐藤里美 |
| 出版社 | エンパワメント研究所 |
| 刊行 | 2018年11月 |
| ISBN | 9784907576509 |
国立国会図書館サーチでは所蔵館も確認できます。2026年10月19日の確認では、埼玉県立久喜図書館などが掲載されていました。所蔵があることと、その日に借りられることは異なります。
近くの図書館にない場合は、取り寄せなどが可能か、利用している図書館へ相談できます。費用や利用条件、貸出状況は館ごとに確認してください。書名が長いので、著者名とISBNをメモしておくと、探すときに伝えやすくなります。
学び直しは子ども時代の後にも続いていく
学校を出た後の学びについても、文部科学省は障害者の生涯学習に関する取り組みを紹介しています。ディスレクシアだけの制度ではありませんが、学びを学生時代だけのものとして扱わない視点が見えてきます。
わたしが井上さんの歩みから考えたいのは、目の前のつまずきで未来を全部決めなくてもよいということです。今は休む時間が必要な子もいるでしょう。学ぶ時期や方法を選び直せる余地があることを、周りの大人も覚えていたいですね。
今日の宿題がうまくいかなかったとしても、その子の「知りたい」までなくなったわけではないかもしれません。本人のペースを大切にしながら、興味を持てるものと出会う機会を残しておく。そんな支え方もできたらいいなと思います。





