「オーストラリアって、もっと離れた場所にあった気がする」。地図を見て、記憶との違いに驚いたことはありませんか。多くの人が同じように事実と異なる記憶を持つ現象は、マンデラエフェクトと呼ばれています。
『ひとやすみっけ』のかおかーさんです。気になったのは、勘違いにも人同士で共通点があるということ。2026年10月20日に確認した研究紹介や公的資料をもとに、地図と記憶の不思議をひもときます。
マンデラエフェクトはみんなで共有する記憶のずれ
マンデラエフェクトは、出来事や名前、画像などについて、複数の人が共通した誤った記憶を持つ現象を指します。単に一人が忘れたという話より、「わたしもそう覚えていた」という一致が注目される言葉です。
名前の由来は、ネルソン・マンデラ氏が1980年代に獄中で亡くなったと記憶する人がいたこと。実際に亡くなったのは2013年です。記憶が鮮明でも、記録と食い違うことはあるんですね。
ただし、一度の思い違いに必ずこの名前を付ける必要はありません。「多くの人に共通する記憶のずれ」を話題にする言葉として捉えると、日常のうっかりとの違いも分かりやすくなります。
オーストラリアはもっと遠かったという感覚
今回のきっかけは、SNSで見かけた、オーストラリアとインドネシアの位置関係への疑問でした。たしかに、頭の中で思い描く世界地図と、改めて開いた地図の印象が違うと少し不思議な気持ちになります。
ただ、この投稿から「国の位置が突然変わった」とは確認できません。また、投稿者がなぜそう記憶したのかも分かりません。地図の見え方と、見る人の記憶の両方から考えてみるのがよさそうです。
まずは、オーストラリアの北側にある島々まで一緒に見てみましょう。「インドネシア」といっても多くの島からなる国なので、どの島とオーストラリアのどこを比べるかで、距離の話は変わります。
世界地図は描き方によって見え方が変わる
地球の丸い表面を平面の地図に表すと、ひずみが生じます。国土地理院の資料でも、角度と面積のひずみを両方なくすことはできず、目的に応じて地図の表し方を選ぶと説明されています。
さらに、世界全体を見るのか、一つの地域を大きく見るのかでも、目に入る情報は違います。以前見た地図が手元にあるなら、同じ範囲を並べてみると、記憶だけで比べるより確かめやすくなります。
| 比べる条件 | 具体的な見方 |
|---|---|
| 地図に載っている範囲 | 世界全体と地域の拡大図を混ぜずに比べる |
| 地図の図法 | 図法名を確かめて形や面積の見え方の違いを意識する |
| 距離を測る地点 | 島と大陸のどこを結ぶか決めてから測る |
| 資料の作成年 | 古い地図と新しい地図の年代や出典を控える |
ここで気を付けたいのは、「全部、地図の描き方が原因」とも言い切れないこと。元の地図や覚えた状況が分からなければ、理由は特定できません。見え方の違いは、考えられる要素の一つです。
参考:国土地理院の地図投影法に関する資料(PDF内184ページ)
大陸は動いているけれど年間約7センチ
オーストラリアは、プレートの動きによって実際に移動しています。オーストラリア地球科学機構は、年間約7センチの移動を説明しています。大陸が動くという部分は、地学で扱われる事実です。
ただし、これは「世界地図で国の配置が変わったと分かるほど、短期間に移動した」という話ではありません。単純計算で10年なら約70センチ。年間の値を10倍した目安で、特定の地点を測った結果ではありません。
地図の座標を更新するニュースも、こうした動きを位置情報へ反映するためのものがあります。「大陸が移動」という見出しだけを読むと大事件に感じますが、何年でどのくらい動く話なのかが大切です。
自信のある記憶にもずれが生まれる
この話題を研究しているのが、シカゴ大学のウィルマ・ベインブリッジ氏らです。2022年の研究では、有名なキャラクターやロゴの画像を使い、人々の記憶に共通した誤りが現れるかを調べました。
研究では、正しくない画像を自信を持って選ぶ例や、記憶を頼りに描いた絵に共通した誤りが現れる例が報告されています。「よく知っている」「自信がある」だけでは、正しさを保証できないという点が印象的です。
一方、すべての例を説明できる単一の原因は突き止められていません。また、これは主に画像の記憶についての研究です。オーストラリアの位置への違和感や、個々のSNS投稿の原因を証明した研究ではありません。
参考:シカゴ大学の研究紹介
記憶違いとうそは同じではない
記憶は、見聞きしたものをそのまま再生する録画のようには働きません。シカゴ大学の解説では、時間の経過や後から得た情報、関連するイメージなどが、記憶の変化に関わり得るとされています。
だから、本人が本当にそう覚えていることと、事実に合っていることは分けて考えられます。記憶が違ったからといって、うそをついているとは限りません。家族で答えが食い違ったときにも、覚えておきたいところです。
気になったときの確かめ方
①自分の記憶を書いておく
資料を見る前に覚えている形や位置を残す
②元の資料と照らし合わせる
地図帳や公式画像でどこが違うかを確かめる
③分かったことと推測を分ける
違いは見つかってもその理由まで分かったとは限らない
「みんなもそう言っている」と感じたら、元の資料まで一緒に見に行ってみる。共感の数を数えるより、何を確かめれば答えが分かるかを考えると、SNSの不思議な話題とも付き合いやすくなりそうです。
親子で地図を描いて確かめてみよう
親子で楽しむなら、地図を開く前に、それぞれの記憶を紙に描いてみる方法はどうでしょう。日本、オーストラリア、インドネシアの大まかな位置を置くだけなら、絵の上手さを競わずに始められます。
先に誰かの答えを見せず、全員が描いてから地図を開くのがポイント。これは記事からの遊びの提案で、記憶力を測る検査ではありません。一人ひとりの違いが出ても、それだけでマンデラエフェクトとは判断しません。
- 答え合わせまではほかの人の絵を見ない
- 正解した数や描く速さで順位を付けない
- 違っていたところだけでなく合っていたところも見つける
- 子どもが乗り気でないときは大人だけでも楽しむ
距離まで気になったら、地図の計測機能を使う方法もあります。国土地理院の地理院地図には距離を測る機能があります。「国同士は何キロ?」から「どの地点同士を測ろう?」へ進むと、地図の見方も深まります。
身近な題材なら、毎日見ている時計の文字盤や、家にあるお菓子のパッケージを思い出して描く遊びもできます。ただし、商品のデザインは変わることがあるので、過去の版と混同していないかも見てください。
かおかーさん覚えているつもりのものほど見直すと面白そう。親も一緒に描いてみたいな
間違い探しより一緒に発見する時間へ
記憶と資料が食い違ったとき、すぐに相手を否定したり、自分の記憶を責めたりしなくても大丈夫。「どうしてそう覚えていたんだろう」と、一緒に確かめるきっかけにできたらいいですね。
マンデラエフェクトの研究は、世界線が変わったことを示すものではありません。分かっていることと、まだ説明できないことを分けながら楽しむ。そのくらいの距離感で、不思議に触れてみたいと思います。
子どもに聞かれて、親も知らなかった。そんな時間も悪くないですよね。正解をすぐ教える役を少しお休みして、地図を広げて一緒に驚く。小さな疑問が、家族で世界を知る入口になるかもしれません。





