イギリスのイングランドでは、読み上げペンなどを学校が借りて試せる取り組みが始まっています。購入前に子どもとの相性を確かめる仕組みです。日本にも無償で提供される音声教材や体験版があり、学校と相談しながら学びやすい方法を探せます。
『ひとやすみっけ』のかおかーさんです。学習を助ける道具が気になっても、買ってから使えなかったらと迷いますよね。今回はイギリスの取り組みを紹介したあと、日本で利用を検討できる教材や相談の進め方をまとめます。
イギリスで始まった学習支援ツールを借りて試す取り組み
英国教育省は2025年6月27日、イングランドの学校を対象に学習支援ツールの貸し出しを試行すると発表しました。学校が機器を借り、子どもの学習に役立つか確かめてから購入を検討できる仕組みです。
発表時の計画では最大32の自治体に貸し出し拠点を設け、最大4,000校での試行を想定しています。この数字は実際の利用校数ではありません。また、イギリス全土の家庭が自由に申し込める制度でもなく、対象地域の学校を通じた取り組みです。
支援の対象は、読むことや書くこと、意思を伝えることなどに難しさがある子どもたち。原文の「SEND」は、特別な教育的支援を必要とすることや障害を指す言葉です。特定の診断名ではなく、幅広い支援の必要性を表しています。
文字を読む道具から意思を伝える道具まで
貸し出す道具の例として挙げられているのは、文字を音声にするペンや音声入力ツール、画像で意思を伝えるタブレットです。どれも学習を助けますが、得意な役割はそれぞれ違います。
| 道具の例 | 助けること | 試すときの確認例 |
|---|---|---|
| 読み上げペン | 取り込んだ文字を音声で聞く | 読みたい行を自分で取り込めるか |
| 音声入力ツール | 話した言葉を文章にする | 誤って入力された文字を直せるか |
| 意思を伝えるタブレット | 画像などを選んで気持ちや希望を伝える | 本人が伝えたい内容を選べるか |
例えば音声入力は、口では説明できても書き始めると手が止まる場面で選択肢になります。ただ、声を出せる場所が必要です。機能があるかだけでなく、普段の教室で使いやすいかまで試す意味があります。
海外の紹介を見て同じ商品を探すなら、日本語への対応も確認したいところ。読み上げペンでは縦書きやふりがなをどう読み取るかも関わります。英語で使いやすい道具が、日本の教科書にもそのまま合うとは限りません。
地域では学校向けの試行が動き始めている
イングランドのスウィンドンでは、2026年2月13日に貸し出し事業の試行開始が案内されています。学校で特別な教育的支援を調整する担当者のうち、指定された担当者を対象に利用を始めたという内容です。
ここで大事なのは、家庭に「必要なら買ってください」と任せるだけでなく、学校が購入前に確かめる機会を持てること。費用の判断に加えて、先生が使い方を知り、授業でどう取り入れるか考えるきっかけにもなりそうです。
ただし、試行の開始は効果がすべて確認されたという意味ではありません。どの道具がどの子のどんな課題に役立つかを確かめる段階です。新しさだけでなく、その後の評価にも注目したい取り組みですね。
日本ではまず音声教材を試す方法がある
では日本はどうでしょうか。今回確認した公的情報では、英国の試行と同じ仕組みを全国共通で利用できる案内は確認できませんでした。一方で、読むことに困難がある子どもへ音声教材を提供する取り組みがあります。
音声教材は、教科書の内容を耳でも受け取れるようにしたものです。文部科学省は、読むことに困難があれば通常学級の子どもも利用でき、申請に医師の診断書は必ずしも必要ないと案内しています。
教材の提供と端末の貸し出しは別です。文部科学省の事業による音声教材は原則無償ですが、再生するパソコンやタブレットは学校や家庭で用意する必要があります。機器の購入前に学校の端末で利用できるか相談してみましょう。
デイジー教科書は体験版から確かめられる
日本障害者リハビリテーション協会が提供する「デイジー教科書」は、紙の教科書を読むことが難しい児童生徒のための教材です。公式サイトには体験版があり、利用する前に画面や読み上げの様子を確かめられます。
正式に利用するには申請が必要です。医師の診断は必須ではありませんが、読むことなどに困難があると申告する必要があります。ダウンロードして使う教科書は無償で、学校で使っている教科書が提供されているかも確認できます。
体験版では、文章を聞きながら画面を見る方法が本人に合うかを一緒に見てみましょう。長い時間使わせる必要はありません。「聞く方が楽」「声の速さを変えたい」といった感想が、次の相談につながります。
アクセスリーディングという選択肢もある
東京大学先端科学技術研究センターの「AccessReading(アクセスリーディング)」も音声教材を無償提供しています。端末やアプリに応じて、読み上げ速度や文字の大きさ、背景色などを調整できます。
読みの困難がある児童生徒の利用に医師の診断は必要ありません。ただし、困っている状況や支援内容を報告する手続きがあります。読みの困難さのチェックリストは、学校等に相談して第三者に記入してもらう必要があります。
教材を読む機器やソフトウェアは提供されません。また、未製作の教科書は提供まで時間がかかる場合があります。使いたい教科書と端末を整理して、余裕を持って相談するとよさそうです。
学校には困っている場面と試したい方法を伝える
相談するときは、担任の先生や校内の支援を調整する特別支援教育コーディネーターへ。「文章題を読み終える前に疲れるので、読み上げを試したい」など、具体的な場面を一つ伝えると話を始めやすくなります。
音声教材だけでなく、学校にある端末の音声入力や読み上げ機能についても聞いてみてください。使用できる機能や設定は学校によって異なります。購入や持ち込みを先に決めず、授業で試せる方法を一緒に探すのがおすすめです。
| 相談すること | 具体例 |
|---|---|
| 試す課題 | 理科の説明文を一段落聞いてから内容を話す |
| 準備と操作 | 設定する人と操作に困ったときの相談相手を決める |
| 本人の希望 | イヤホンを使いたいか、どこで使いたいかを聞く |
| 振り返り | 疲れ方や分かりやすさを本人と先生で確かめる |
読む練習をする時間と、読んだ内容を考える時間では学習の目的が違います。また授業で使える方法が、テストでもそのまま認められるとは限りません。評価の場面での利用は別に相談しておきましょう。
子どもに合う方法を選び直せることが大切
イギリスの取り組みからわたしが感じたのは、買う前に試せる安心感です。道具を使わなかったときも、操作が難しいのか、声が合わないのか、人前では使いたくないのか。本人の感想から分かることがあります。
かおかーさん合わなかったら別の方法へ。子どもが道具に合わせて頑張りすぎなくてもいいんですよね
日本の音声教材も、合わなければ別の団体の教材を申請できると文部科学省が案内しています。一度で正解を選ぼうとせず、まずは体験版や学校で使えるものから。子どもの「これなら分かる」が見つかる機会を増やしていきたいですね。
※2026年10月23日に確認した英国政府・自治体、文部科学省、各教材提供団体の公開情報をもとに作成しています。対象や申請方法は各公式サイトをご確認ください。





