マズローの5段階欲求は、不登校や発達特性のある子が必要としている支えを考える手がかりになります。ただし原因を診断するものでも、欲求を満たせば登校できるという法則でもありません。眠れているか、安心できる場所があるか、本人の思いが尊重されているか。そんな視点で暮らしを見直すために使いたい考え方です。
『ひとやすみっけ』のかおかーさんです。子どもが学校に行きづらくなると、勉強や将来が心配になりますよね。今回は5段階欲求の意味と、子どもや保護者を追い詰めずに関わるための考え方を整理します。
マズローの5段階欲求とは
マズローの5段階欲求は、心理学者アブラハム・マズローが1943年の論文で示した人間の動機づけに関する考え方です。生きるための欲求から自分の可能性を発揮したい気持ちまでを整理しています。
ここでいう欲求は、わがままという意味ではありません。眠りたい、安心したい、誰かとつながりたいといった願いも含みます。承認の欲求には周囲からの評価だけでなく、自分の力を感じたい気持ちも含まれます。
5つの欲求を暮らしの言葉で考える
自分の力や可能性を生かしたい
自分を大切に思いたい 周囲からも尊重されたい
誰かとつながりたい 受け入れられたい
怖さや脅威から守られたい 安心して過ごしたい
食べたい 眠りたい 体を休めたい
理論をもとにした編集部の説明図です。子どもの発達段階や回復の順番を示すものではありません。
ただし5段階は発達年齢や子どもの成熟度を測る尺度ではありません。図の下にある欲求が強いから幼いということでもなく、登校できている子が上の段階にいるという意味でもありません。
下から順に満たさなければいけないわけではない
よく見るピラミッドは分かりやすい反面、一段ずつ合格しないと先へ進めないようにも見えます。でもマズロー自身も、順序は厳密に固定されず、欲求が完全に満たされてから次が現れるわけではないと説明しています。
例えば不安を抱えながら絵を描きたい子もいます。友達とのつながりが支えになる子もいれば、一人で好きなことに取り組む時間を大切にしたい子もいます。複数の願いが同時にあってよいのです。
この理論は不登校の原因を診断する検査でも、再登校を保証する支援方法でもありません。この記事では子どもの暮らしを振り返る視点として紹介します。詳しくはマズローの原論文(英語)を確認できます。
不登校を安心不足だけで説明しない
学校に行けない理由は一つとは限りません。人間関係、授業の難しさ、感覚的な負担、体調などが重なることもあります。安心が足りないと決めつけるだけでは、本人が困っている具体的な場面を見落としてしまいます。
不登校だから家庭の愛情が足りないとは判断できません。家で大切にされていても学校で強い負担を感じることはあります。保護者がすべての欲求を満たさなければと背負うための理論にしないでほしいと思います。
文部科学省の通知も登校という結果だけを支援の目標にせず、本人の希望や状況に応じた支援を求めています。休養が意味を持つ場合もある一方、学びや人とのつながりを支える必要性も示しています。
発達特性がある子の安心を具体的に考える
同じ教室にいても感じている負担は違います。感覚過敏のある子には周囲が気にしない音や刺激がつらいことがあります。静かに座れているかだけでなく、どんな場面で疲れるかにも目を向けたいところです。
国立特別支援教育総合研究所の支援例でも、本人のつらさを観察して理解し、無理をさせない関わりが示されています。下の表は学校と相談する際の例です。診断名だけで一律に当てはめず、本人の感じ方を確かめます。
| 困っている場面の例 | 学校と相談する工夫の例 |
|---|---|
| 教室や体育館の音がつらい | 静かに過ごせる場所や休憩方法を用意する 必要に応じて耳を保護する道具の使用を相談する |
| 急な予定変更に戸惑う | 一日の予定を見える形で示す 変更点と次にすることを短く伝える |
| 読むことや書くことに強い負担がある | 読み上げや入力など別の方法を検討する 課題の目的に合わせて量や提出方法を相談する |
| 困っていても口頭で説明しにくい | メモやカードでも伝えられるようにする 相談する大人を決めておく |
発達特性があれば必ず不登校になるわけではなく、不登校というだけで発達障害とも判断できません。気になることがあれば診断の有無を待たず学校に相談し、必要に応じて専門機関につないでもらえます。
家庭では理由を急がず困る場面を一緒に探す
どうして行けないのかと聞いても、本人がうまく説明できないことがあります。話せないときに答えを求め続けるより、少し落ち着いている時間に、何がつらいかを小さく聞く方法もあります。
例えば朝の支度と教室に入るときではどちらがつらいか。音と人の多さでは何が気になるか。答えは言葉だけでなくメモや指差しでも構いません。分からない、今は話したくないという返事も受け止めます。
保護者が記録するなら、眠れた時間、体調、負担が大きかった場面、少し楽だった場面を簡単に。登校できた日だけに丸を付けるより、何が助けになったかを先生や相談員と話す材料になります。
学校に伝えるときの例
「学校を嫌がっています」だけでは伝わりにくいときは、「教室に入る前に耳をふさぎます」「急な変更がある日に不安が強くなります」のように場面を添える方法があります。本人が言ったことと大人の推測は分け、どの情報を誰に伝えるかも本人と相談できると安心です。
認めることを登校へのごほうびにしない
承認の欲求と聞くと、たくさん褒めればよいと思うかもしれません。ただ、学校に行けたときだけ褒める関わりになっていないかは考えたいところです。本人の価値と出席日数を結びつけない姿勢が大切です。
困っていることを伝えられた、自分に合うやり方を選べた、好きなものを作った。そんな出来事にも目を向けられます。反対に成果が見えない日でも、食事や休息、安心して過ごす場所を得るために頑張る必要はありません。
好きなことに熱中できる様子があっても、それだけで学校の負担に耐えられるとは判断できません。家庭で楽しむ姿と学校でのつらさの両方を、その子の状態として見ていきたいですね。
かおかーさんできたことを増やす話ばかりになっていないか、わたしも立ち止まって考えたいな
休むことと支援につながることは両立できる
休ませるか登校させるかの二択で考えると、保護者も苦しくなります。本人の休息を確保しながら、保護者だけでスクールカウンセラーに相談したり、学校と負担の減らし方を話したりすることもできます。
別室で過ごす、短い時間から参加する、教育支援センターや自宅で学ぶなど相談できる選択肢はあります。どれが合うかは本人と一緒に考えます。安心が完全に整うまで学習や交流を控える必要もありません。
一方で腹痛や頭痛をすべて心の問題と考えないことも大切です。体の症状が続く、食事や睡眠が大きく崩れるなど生活への影響があれば小児科などへ相談を。理論を当てはめるより先に体調を確かめたい場面です。
川口市では不登校と発達の心配を相談できる
川口市の教育相談では学校に行きたがらないことや学習の遅れ、発達に課題があると思われる子の就学・進路などを相談できます。理由が整理できていなくても、家庭で気になっている様子から伝えられます。
川口市教育研究所の教育相談
教育相談室直通
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窓口情報は2026年10月22日確認
来室相談は予約制です。訪問相談や教育支援センターについての案内もあるため、子どもが窓口へ出向くのが難しいときはそのことも伝えてください。埼玉南部のほかの市では各市の教育相談窓口が入口になります。
子どもの今の願いを一つ知るところから
5段階のどこにいるかを決めるより、今日は何がつらくて何が少し楽なのか。その違いを知るために使うなら、この考え方は子どもを見る視点を増やしてくれそうです。すべてを一度に整えようとしなくて大丈夫です。
わたしは保護者にも安心して話せる相手や休める時間が必要だと思います。子どもを支える人が一人で抱え込まないことも大切。今できそうな工夫を一つ選び、学校や相談先と一緒に考えていけるといいですね。





